『きんとうか』
ブランド:GRISEDGE
ジャンル:ADV
レーディング:X指定
シナリオ:都志見文太
原画:沢田ジュリオ
ボイス:有
萌え:少女漫画
総合:佳作
シナリオ:★★☆
『図書室のネヴァジスタ』『Si-Nis-Kanto』『アイドリッシュセブン』などで知られる人気ライター・都志見文太氏が担当する鳴り物入りのBLゲーム。前評判通り完成度の高いテキストですが、読んでいて疲れる。これはライターだけのせいではないので後述します。
祖母の死をきっかけに幼い頃過ごした島に帰郷した主人公が、奇妙な風習や因業に巻き込まれつつ失われた自身の過去と「魂の片割れ」を探す……というとミステリあるいは伝奇モノに見えますが、実際はクソ田舎体験ゲーもといヒューマンドラマ。攻略対象は島の最高権力者の宗定、クール眼鏡の愁、ヤンチャ年下の恭、記憶喪失の謎の青年の4人。その他サブキャラが盛りだくさんで、各ルートに関わってきます。
シナリオはエンタメとは程遠く、真相部分も共通ルートでだいたい予想がつく。だからテキストの美しさを味わうのが正しい楽しみ方なのでしょう。しかしそのテキストを使って描かれる多くのキャラが、良くも悪くも賢しく作り物めいているため「ゲーム」との相性が悪い。全員が全員、作者の美しく豊富な語彙力をもって滑らかに語り、作者に与えられた役割通り生真面目に動く人形なので、次第に興味が失せていってしまう。
この筆致は小説向き、それもミステリやファンタジー向きです。スマホ世代の若者を描く群像劇には浮世離れしすぎたテキストも、媒体と題材を選べばこの上なく輝くと思います。描かれるテーマは普遍的で、現代人の共感を得やすい。その良さに素直に浸れていればと、我ながら無念です。
グラフィック::★★☆
『神様(仮)』で原画を務めた沢田ジュリオ氏がキャラデザを担当。中身のスチルや立ち絵の表情変えはメーカー内部で制作されているようで、無慈悲なまでに出来の差が露呈している。特に主人公は、パッケージ絵と顔も雰囲気も違いすぎて新キャラかと疑うレベルです。背景はキレイでパターンが多く、夏の田舎町の空気がよく伝わってきました。
サウンド:★★★★
和風、ゆるやか、セツナイで統一されていて、クオリティの高い楽曲揃いです。反面この作品といったらコレ、というキラーチューンがなかったのが残念。主題歌『十字路』は、なにを血迷ったんだと問い詰めたくなるほど曲調が爽やかJPOPで作品に合っていない。挿入歌『あやとり』は空気を読んだ泣かせる曲なのに、なぜ大事なところを外してしまうのか?
ボイス:★★★★
女性向け18禁媒体で活躍されている声優さん揃い。演技力も全員そつがなく、キャラのイメージにも合っていたと思います。宗定や愁は独特な祝詞のセリフが多いのですが、抑揚などがそれぞれ違っていて、きちんと演技指導されているのだと感じました。
演出:★★★
エフェクト、トランジション、フェードアウト、どれをとってもそつなく基本に忠実な演出。SEの使い方も細かいです。それなのになぜ大事なエンドロールで外してしまうのか? クレジットに合わせてモザイクCGを堂々と垂れ流すのは、さすがにシナリオゲーでやってはならない。えっちは愛の営みだから恥ずかしくないとでも言いたいんでしょうか……。
システム(ゲーム性含む):★★☆
動作やコンフィグは快適そのもの。用語集や相関図があるのも嬉しい。
ただし一番文句を言いたいのもココ。読んでいて疲れる原因の大部分が立ち絵表示のせいです。ただでさえ頭身が高い立ち絵が膝下あたりまで表示されるので、テキストを追っていると表情差分がまるで見えません。必然、画面下と上で視線が行ったり来たりになるのでものすごく疲れる。せめて主人公の顔グラがテキストボックスに表示されるならまだしも……。
その他、エンドロールの音量調整不足、動作確認も兼ねる体験版未公開、無期限プロテクトだけはガッツリかける等々、本編とは関係ないところでストレスが溜まりました。
総合:佳作
シナリオ・ビジュアル・システム・サウンドが一体となるべきADVで、お互いの要素が絶妙に噛み合っておらず、足を引っ張り合っているように感じました。面白いお話を楽しみたいなら映画でも小説でも事足ります。PCゲームならではの魅力、どうすれば快適にプレイできるかをしっかり考えて制作してほしい。どんな有名無名のクリエイターを起用しようと、生かすも殺すもメーカー次第です。そこがゲームの面白さであり、難しさでもあると改めて気づかされた作品でした。

好きキャラ:渡利愁
好きルート:-
好きカップリング:-
好きサウンド:『あやとり』
こんな人にオススメ:ライターファン、若いユーザー、ゲーム媒体には一家言あるとか言っちゃわない奴

 
 

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