『古書店街の橋姫』
ブランド:ADELTA
ジャンル:ADV
レーディング:X指定
シナリオ:くろさわ凛子
原画:くろさわ凛子
ボイス:有
萌え:最強のコスパとギャップ萌え
総合:名作
シナリオ:★★★★☆
同人ゲームとは思えないクオリティと、同人ゲームらしい作者のこだわりと愛情が同居し、なおかつプレイヤーを楽しませようというエンタメ精神。ほとんど1人でもここまでできるのだと、女性向け同人ゲームの可能性をさらに広げてくれた歴史に残る力作です。
時は大正・帝都。親友の不可解な自殺をめぐり3日間を繰り返す、いわゆるループもの。歴史改変ではなく並行世界なので、誰かのルートが誰かのルートの踏み台になるのでは……という心配はありません。さらにBLとして押さえるべきところは確実に押さえていて、世界観こそ作者の好みだろうけれど萌えは万人向けに配慮されていると感じました。
攻略対象は温厚な読書家の水上、毒舌ドSの川瀬、堅物軍人の花澤、変態科学者の氷川博士、謎めいた能面の男の5人。それぞれ純愛・探偵・冒険・科学・猟奇とテーマが決まっており、ルートによって作品の印象が違うのが面白い。難点は初回固定の水上ルートの出来があまりに良すぎて、そこが最高潮になってしまうこと。キャラ萌えができれば、続くルートも充分楽しめるでしょう。
テキストは主人公・玉森の一人称で、必要以上に飾らず、時々さりげなくウィットのきいた言い回しが出てくる。非常に明快な物語構成はプレイヤーに考察させるタイプではありません。BLという大前提の邪魔をせず、これはこれで上手いと感じました。
BLゲーム好きであればやるべき作品と断言できます。好みの違いはあれど、圧巻のボリュームと読ませるシナリオに舌を巻くこと間違いなし。
グラフィック:★★★★★
現代風のスッキリしたキャラクターデザインに、蛍光色を思いっきり使いまくったビビッドな塗り。悲劇とも喜劇とも純愛ともとれる本作のイメージにぴったり合っています。
立ち絵はバストアップをカットインで使用しているので、表情差分がわかりやすいのが高ポイント。背景はほとんど描き下ろしというこだわりっぷり。枚数もかなり多く、構図、彩色ともに凝っており、よくぞここまでと感動しました。キャラデザでは殉教者然とした水上、一目でいじめっこだとわかる川瀬、癒しの晴彦さん&蛙男が好き。
サウンド:★★★★☆
同人音楽サークル灰色Logicが担当。怪しく退廃的な和風レトロサウンドが心地いい。基本的には自己主張せずBGMに徹しているものの、『橋桁のてるてる坊主』や『南洋幻想』などケレン味たっぷりな曲もあり、いっそうゲームを盛り上げてくれました。
ボーカル入り3曲。一部エンディングで流れる『eyes only』は、軽快なメロディに透き通った女性ボーカルが神秘的で、歌詞をよく聴くとあのキャラ視点だとわかるのも小憎らしい仕掛け。
ボイス:★★★★☆
よくぞここまで第2弾。無名の方が多いですが、芸達者すぎてびっくりした。
玉森役の方は、玉森というキャラクターをよく理解していると素人でもわかる。(ネタバレ)店主と同化後の慈愛に満ちた声音、最終ルートでの三十路声(ここまで)など絶妙に演じ分けられています。本作は“泣き”の演技が素晴らしく、特に水上ルート後半の玉森の慟哭、キネマでの水上の嗚咽は、聴いている側も涙腺を刺激される。川瀬役の方は奇跡のハマり役。涼しげな畜生ボイスを、あんなに生き生きと出せる人はなかなかいないw
演出:★★★★
楽曲演出、場面転換などこなれている印象を受けました。アイキャッチで帝都の地図を入れる、バックログを縦書き表示にする等、ちょっとした工夫が光る。シーンに合わせて一部をズームしたりあえて立ち絵を見せなかったり、シナリオ・グラフィック同時担当の強みがよく出ています。
感心したのがハイライトシーンのBGM。あえてループさせず、テキスト量(クリック数)と曲の終わりまでをシンクロさせる手法でフェードアウトによる「しらけ」を解消しています。こういった細かい気配りが嬉しい演出でした。
システム(ゲーム性含む):★★☆
スタンダードな吉里吉里製。致命的なバグはありませんが、誤字脱字が多く、せっかく搭載されたボイス再生機能が抜けている箇所があるなど、デバッグはやや甘い。回想モード無し。スチル閲覧はできますが、全部が収録されておらず残念でした。キャラプロフィールや持ち物一覧など遊び要素あり。
初回は選択肢なしで水上ルート固定。クリア後、川瀬→花澤→博士→能面の男と解放されていきます。選択肢は実質1つ、各EDも1つなので、ADVよりノベルゲームに近いかも。
総合:名作
どこに出しても、誰に勧めても恥ずかしくない名作。水上ルートに至っては傑作で、特にモノを作る・物語を生み出す人間にとって忘れられないお話になると思います。「お前さえいてくれれば、私は文士でいられる」……なんて幸せな言葉でしょうか。
軽い気持ちでプレイしてみるといい。定価2500円とお手頃なので肌に合わなくても後悔しないし、ツボに入れば抜け出せなくなります。私はBL萌えを期待せず世界観にだけ惹かれて始めて、たいして興味なかったはずの水上から「ぬわーーっっ!!(号泣&萌え)」と奇襲を受けました。なんというピュアラブ。もう水上ゲーにしか見えない。くそう、まさかここまでとは……。

好きキャラ:玉森、店主、水上、川瀬
好きルート:水上ルート
好きカップリング:水上×玉森
好きサウンド:『eyes only』『橋桁のてるてる坊主』『後日譚』
こんな人にオススメ:物書き、SFロマン・近代文学好き、大正時代の退廃的な雰囲気が好き

 
 

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