『大正メビウスライン』
ブランド:LoveDelivery
ジャンル:大正剣劇浪漫アドベンチャー
レーディング:X指定
シナリオ:中条ローザ
原画:敷田歳
ボイス:有
萌え:稀有なバランス感覚
総合:名作
シナリオ:★★★★☆
『華やかなりし大正浪漫』というわりには地味で血なまぐさい印象と、扱いの難しい近代史を下地にした取っ付きづらさから、プレイするまでの敷居が高いゲームだと思う。どっこい蓋を開けてみれば、激動の時代に無理なくBLを絡めた、稀に見るバランスの取れた作品でした。
勉学のため帝都に上京してきた主人公が、彼の持つ刀と異能ゆえ、死霊を操る帝國陸軍と、異能集団・五本刀衆の争いに巻き込まれていく筋書。
攻略対象は軍人の千家・館林、五本刀衆の時雨、民間人(?)のミサキと、それぞれ異なる立場についていて、主人公がどこの組織に協力するかで展開が大きく変わります。どのルートでもわりと全員活躍するのでキャラへの愛着が深まるうえ、ルートによって主人公の性格が微妙に変化するというBLでは珍しい試みによって、オールクリアまで飽きさせない。
前述の通り、シナリオには『戦争』『列強の支配』『皇統』といったきわどい要素が含まれています。現代の私たちが想像しうる、あるいは今なお持たざるを得ない思想・大義を、キャラクターたちを通してなるべく多面的に語らせ、最後には国も政治も関係なく、誰もが当たり前に抱く望みに着地させる。上手いなと、素直に感心しました。
正直BLしてる場合じゃない展開目白押しですが、時雨ルートだけは自分の好みドストライクで本当にありがとうございました。背中を預け合い支え合う絆で結ばれて(勢いあまってアレな契りも交わし)成長していく若者はいいもんです。時雨はゲーム開始時点すでに男前なのに、この上さらにイケメンになろうというのか……そのポテンシャルに戦慄すること間違いなし。
制作者の主張一辺倒になりがちな題材ながら毒気が無く、ユーザーを意識してBLとして収束させた手腕はお見事。全てがバランスよく配置されて回る、タイトル通りきれいな円環を描いているシナリオでした。
グラフィック:★★★★
原画担当はイラストレーターの敷田歳氏。作風によく合っていて生き生きと描かれていています。アダルトシーンでは目をすがめたり頬に髪がかかったり、絶妙な差分が実にいい仕事をしています。
やや気になったのは、塗りにばらつきがあったこと。京一郎の立ち絵や一部CGがもっさりしているというか、ぼやけて見えて残念。
サウンド:★★★★
音楽同人サークル六弦アリスが担当とのことで、その界隈ではちょっと話題になったのでは。
弦楽器を用いたモダンでレトロなBGMはまさに大正浪漫。特にアダルトシーンで流れる『蜜欲』が素晴らしい。使いどころも心身ガッツリ結ばれた時ではなく、お互い手探りだったり快楽重視のシーンで流れるという小憎らしさ。
主題歌、挿入歌はもちろん、エンディング曲もキャラ別に用意されていて、力が入っているなと感じました。願わくば曲名にも力入れてください。
ボイス:★★★★
端役までフルボイス。
主人公役の鯱矛太郎氏は、各ルートに対応して声色を変える芸の細かさが光る。メインの中では肝心のミサキが抑揚に欠けていて、おぼつかなげだったのが残念。あんただけは外しちゃイカンだろ。
最優秀演技賞は時雨役の泉菊之介氏。ギャップ萌えに定評のある時雨は相手や場面によって態度をがらっと変えるのですが、ボイスもその例に漏れません。頭領としての凛々しく頼もしい声、気安い相手へのやんちゃな口調、それら全てを覆す床の中での吐息囁き含み笑いetc。勘弁してください。私の三ツ矢サイダー返してください。
演出:★★★☆
術発動シーンでのカットイン、イベントCGで髪やマントの一部がアニメーションするなど、頑張って演出しています。野暮ったいところもありますが、次回作『東京陰陽師』では演出レベルが飛躍的にアップしているのでホモゲー界も日進月歩。斬撃や術のSEなんかはよかった。
システム(ゲーム性含む):★★★
安定していて快適。修正パッチをあてたおかげか、誤字もほとんどありません。
コンフィグには若干難ありで、個別にボイス音量調整ができないのが痛い。また起動画面のアイコンも窮屈で、ゲーム終了ボタンを押すのに手間取る。
攻略制限がかかっており、初回はミサキ攻略不可。ミサキ含む全員のエンディングを見て、ミサキルートから続く真相ルート解放という仕組み。選択肢の中には日本神話の寓意もあって面白い。
総合:名作
善悪で割り切れない主義主張を描きつつも、帰結するのはありふれた願いと祈り、「御霊安らかなれ」。
近代史に臆せず挑んだメーカーの勇気、なおかつBLというエンタメにまとめ上げた実力は本物です。
時雨くらいしか攻略意欲湧かないな~とか、この設定でお坊ちゃんな主人公はちょっと~とかナメててすみませんでした。ぶっちゃけ今でも意欲は湧かないし、主人公はさらピンお坊ちゃんですが、そんなこと問題にならないくらい面白かった! 和風シナリオゲー好きなら黙ってプレイしろ! と過去の自分に言って聞かせたい。

好きキャラ:時雨、伊勢兄弟
好きルート:真相ルート、時雨ルート
好きカップリング:時雨×京一郎
好きサウンド:『電燈夜』『蜜欲』&各エンディング曲
こんな人にオススメ:和風好き、近代史好き、神道や戦前日本への広く浅い理解を持っている

PSP版。各キャラ追加エピソード有り。エロスがギリギリセウト。 サントラ。主題歌・挿入歌フルver収録。 祝詞でおやすみCD(適当)ミニドラマも収録。 とこしえにお幸せに(˘ω˘)

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